4844

4844は、2024年に実施されたEthereumの主要なアップグレードであり、Proto-Danksharding(プロト・ダンクシャーディング)とも呼ばれています。このアップグレードでは、Layer 2のスケーリングソリューション向けにコストを削減する目的で、blobによる一時的なデータ保存メカニズムを導入しました。これは、Ethereumが完全なシャーディング技術へと進化するためのロードマップ上で、極めて重要な中間ステップです。
4844

4844は、EthereumのDencunアップグレード(旧称EIP-4844)の中核を成す重要な機能であり、2024年3月13日に実装されました。このアップグレードは、Ethereumのスケーラビリティ強化ロードマップにおける画期的な一歩であり、Blob(ブロブ:バイナリ大容量オブジェクト)と呼ばれる一時的データ保存メカニズムの導入により、Optimistic RollupsやZK-Rollupsなどレイヤー2スケーリングソリューションのコストを大幅に削減します。Proto-Danksharding(プロト・ダンクシャーディング)とも呼ばれるこのアップグレードは、完全なDanksharding(包括的シャーディング技術)への中間段階として位置付けられ、新たなトランザクションタイプとデータ処理方式により、Ethereumネットワークのデータ可用性を高め、取引手数料の低減を実現します。

4844の起源

4844は、Ethereumコア開発者であるVitalik Buterin氏やDankrad Feist氏をはじめとした開発陣によって、2021年に提案されたEthereum Improvement Proposal EIP-4844に基づきます。この提案は、特にレイヤー2スケーリングソリューション向けに、よりコスト効率の高いデータ公開メカニズムを提供し、Ethereumの高額な取引手数料問題を解決することを目的としています。

Ethereumのスケーラビリティ向上ロードマップにおいて、シャーディング技術は長期的な解決策ですが、完全な実装には長期間を要します。Proto-Dankshardingは過渡的な段階であり、開発者は完全なシャーディング技術を待たずに部分的なスケーラビリティ向上を得られます。

4844は、提案から実装に至るまで厳密なテストやレビューを経て、複数のテストネットワークでのデプロイと検証の後、Dencunアップグレードで稼働を開始しました。このプロセスは、Ethereumコミュニティがネットワークの安全性を担保しつつ、段階的かつ計画的にスケーラビリティ向上を進めている手法を示しています。

4844の仕組み

4844の革新は、Blob-carryingトランザクション(ブロブキャリングトランザクション)と呼ばれる新しいトランザクションタイプ、およびそれに伴うデータ処理メカニズムの導入にあります。

  1. Blob(ブロブ)データ構造体:Blobは主にレイヤー2ソリューション向けに設計された、一時的にブロックチェーン上に保存される大容量データパッケージであり、最大125KBまで格納可能です。

  2. データ可用性と有効期間:Blobデータはバリデータやネットワーク参加者に対して約1〜2週間可視化され、その後ネットワークによって自動的に削除されます。この一時保存の特性によって、データ可用性とストレージ負荷のバランスを最適化します。

  3. Blob料金制度:4844はメインネットのガス手数料とは独立したBlob料金制度を導入し、目標データ量に基づいてコストを自動調整することで、レイヤー2ソリューションがより予測可能かつ低コストでデータ公開を行えます。

  4. KZGコミットメント(Kate-Zaverucha-Goldberg commitments):各BlobはKZGコミットメントによって検証され、全ノードが完全なBlobデータをダウンロードする必要なく、データの完全性を保証します。

  5. 実行環境の分離:BlobデータはEthereumの実行レイヤー(EVM)から分離され、スマートコントラクトの計算には直接関与せず、レイヤー2ソリューション向けのデータ可用性レイヤーとして機能します。

この仕組みにより、レイヤー2ソリューションは証明やトランザクションデータをEthereumメインネットに低コストで公開でき、ユーザーにとってもより経済的な取引体験が実現します。

4844のリスクと課題

4844はEthereumエコシステムに大きな恩恵をもたらしますが、同時に以下のようなリスクや課題も抱えています。

  1. 技術的複雑性:新しいトランザクションタイプやデータ構造の導入によりシステム全体の複雑性が増し、未知の脆弱性やセキュリティリスクが発生する可能性があります。

  2. ネットワークリソースへの負荷:Blobデータは一時保存ですが、トランザクション量が増加すると、一部のリソース制約のあるバリデータにとってストレージや帯域幅への短期的な負荷となる場合があります。

  3. エコシステムの適応:レイヤー2プロジェクトやウォレット事業者、インフラサービスはBlobトランザクション機能の最大活用のために技術的調整が必要であり、この過程が円滑に進むとは限りません。

  4. Blob料金制度の不確実性:新たなBlob料金制度は、実際の運用で価格変動や市場適応など予想外の課題に直面する可能性があります。

  5. 完全なDankshardingへの移行:Proto-Dankshardingは中間段階であり、今後完全なシャーディング技術へ移行する際には、さらなる技術的課題や調整コストが発生する可能性があります。

さらに、Ethereumネットワークの大規模アップグレードであるため、実装上の問題がエコシステム全体に広範な影響を及ぼすリスクもあり、継続的なコミュニティ監視と最適化が不可欠です。

4844はEthereumのスケーラビリティ強化ロードマップにおける重要なマイルストーンであり、ブロックチェーンの「トリレンマ」問題の解決に向けて大きな進歩を示しています。Blobトランザクションや一時的データ保存メカニズムの導入によってレイヤー2ソリューションのコストを大幅に削減し、Ethereumネットワークがより多様なアプリケーションや大規模なユーザー基盤を支えることを可能にします。一般ユーザーにはより低い取引手数料と快適なユーザー体験を、開発者には高効率なスケーラブルアプリケーション構築のためのインフラ基盤を提供します。今後さらに多くのレイヤー2プロジェクトがこの技術を取り入れ活用することで、Ethereumエコシステム全体のスループットが大幅に向上し、Web3アプリケーションの大規模普及に道を拓くでしょう。

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