モジュール化の狂潮 Web3は分散化に向かっているのか、それとも成熟化に向かっているのか？

ブロックチェーンの世界はパラダイムシフトを経験しており、モジュール化アーキテクチャがWeb3インフラの主導力となっています。

すべての機能を内部で完結させるモノリシックなブロックチェーンとは異なり、モジュール化チェーンは異なるレイヤーや専用チェーンが独立して機能を処理することで、合意形成、データ利用性、実行、決済などのコア機能をデカップリングし、より高い柔軟性と拡張性を実現しています。

このデカップリングにより、各機能は他に影響を与えることなく独立して最適化・アップグレードが可能となります。

本稿の内容

1. モジュール化のトレンドと、その性能、分散化、相互運用性への影響。

2. これはエコシステムの健全な成熟の兆しなのか、それとも混乱した断片化の表れなのか。

CelestiaのメインネットローンチからRollup as a Serviceの台頭まで、スケーラビリティとカスタマイズ性を巡る議論はますます注目を集めています。しかし、これは未来の道なのか、それとも単なる分岐点に過ぎないのか？

このトレンドは現在、非常に重要です。

具体的な動き

• L2の採用率が急増し、Rollupの総ロック価値は2025年で400億ドル超（L2Beat, 2025）。
• 開発者の関心はL1の競争からモジュール化実験へとシフト。
• ベンチャーキャピタルやプロトコルは、Eclipse、Avail、Sovereignなどのモジュール化インフラに大きく賭けている。

創業者、研究者、投資家は、モジュール化がブロックチェーンの未来をどのように再定義し得るのか、またこれは持続的な変革なのか、それとも一時的なブームなのかを理解する必要があります。

背景と定義

モノリシックブロックチェーン

Solanaや、Rollup導入前のEthereumのような単体ブロックチェーンは、内部で全てのコア機能を実行します。

共通点：合意形成、実行、データ利用性、決済。

例：

Bitcoin：単一で統一された構造を持ち、すべてのコア機能が一体となっており、取引データは直接ブロックチェーンに保存される。

Solana：高性能な単体チェーンで、垂直統合により速度とスループットを実現。

Rollup導入前のEthereum：Layer 2のRollupが実行層をデカップリングする前の段階も単体アーキテクチャ。

モジュール化ブロックチェーン

これらのレイヤーをデカップリングし、特定のレイヤーに集中したり、残りを外部委託したりする設計。専門化と分業により、システムの効率と拡張性を向上させることを目的としています。

例：

Celestia：データ利用性と合意形成を提供する最初のモジュール化ブロックチェーン。

Cosmos SDK：アプリケーション専用の実行層構築を支援。

Rollup as a Service（RaaS）：CalderaやConduitなどの参加者が、モジュール化フレームワークを用いて自らのRollupを立ち上げる支援を行う。カスタマイズ性、拡張性、実験性を支える一方、断片化のリスクも伴う。

ROLLUP

RollupはLayer 2の拡張ソリューションの一つで、オフチェーンで取引を処理し、それらをバッチ化して単一の取引としてメインチェーンに提出します。

• Optimistic Rollup： L2上の取引は有効と仮定し、ネットワークが無効性を証明しない限り有効とみなす。チャレンジ期間を設け、異議申し立てを可能に。
• *Zero-knowledge Rollup： 有効性証明をチェーン上に提出し、取引の正確性を証明。例：StarkwareのStarkEx、zkSync Era。

Rollupの台頭は、特にEthereumのロードマップにおいて、モジュール化を実現可能かつ必要不可欠なものとしています。

これは、Ethereum誕生以来の根本的な課題――スケーラビリティの問題に由来し、高いガス代、遅い取引速度、ネットワークの混雑を引き起こしています。

事例研究：Ethereumのモジュール化の道のり

2025年第2四半期までに、40以上のRollupが運用段階またはテストネット段階にあります。

L2エコシステムの開発活動は前年比230％増加。Optimism、Arbitrum、BaseがGitHubのコミット数でリード。

2023年末のメインネットローンチ以降、Celestiaはテストネットや早期展開で急速に採用され、25以上のモジュール化チェーンがそのDA層に依存。

2022年以降、モジュール化インフラプロジェクトは累計で4億ドル超の資金調達を実現。注目の資金調達例は：

• Eclipse：5000万ドル
• Avail：2700万ドル
• Dymension：670万ドル

Electric Capitalの開発者レポートによると

2024年

• Cosmos SDKの月間アクティブ開発者は前年比13％増。
• CelestiaベースのRollupは2025年第1四半期に100人以上の開発者を惹きつける。
• 2023年末以降、CelestiaやRollkit、Availなどのモジュール化インフラのGitHub活動は50％以上増加。

ZKプリコンパイルを用いたコントラクト展開図

出典：Electric Capital

Layer 2の成長

Rollupの総ロック価値は、2023年初の約100億ドルから2025年6月には428億ドルに拡大。

ArbitrumとOptimismが依然として主導権を握る一方、BaseやBlastも急速に市場シェアを拡大しています。

L2BeatのL2 TVL成長グラフ

ブロックチェーンエコシステムの進化とともに、これらのプロジェクトは開発者とユーザーにとって、拡張性・相互運用性・カスタマイズ性の高いソリューションを提供する最前線にあります。

Caldera、Conduit、StackrといったRaaSプラットフォームは、カスタムRollupの立ち上げ期間を数か月から数日に短縮しています。

しかしながら、ノイズも存在します。多くのチェーンはローンチ後の利用率が低いか、投機的な実験に過ぎないケースもあります。開発者の断片化、ツールチェーンの非互換性、トークン経済学のミスマッチも依然として大きな課題です。

ナarrative分析

モジュール化への移行は理念的な側面を持ちます。モジュール化チェーンは、Web3の精神である分散化、専門化、非許可性の実験を体現しています。ただし、その自由には代償も伴います。

• ユーザーは複数のウォレット、ブリッジ、インターフェースを管理する必要がある。
• 認知負荷が高まり、複数レイヤーの管理が求められる。
• DAと実行層は堅牢かつ相互運用可能でなければならない。

一方、Solanaのようなモノリシックアーキテクチャは、実行・合意・データ利用性が単一レイヤーで完結し、速度とシンプルさに優れるものの、Ethereumのモジュール化アーキテクチャと比較すると、重大な課題も抱えています。

Solanaのような単体ブロックチェーンの顕著な課題は、混雑による停止です。すべてのレイヤーが一体化しているため、実行ロジックの混雑やエラーが合意形成の停滞を引き起こすことがあります。これにより、何度もネットワーク全体の中断が発生しています。

Solanaの単体設計は、高速性と開発者のシンプルさを提供しますが、その代償として拡張性の上限、分散化の課題、システムの脆弱性が伴います。

断片化は、ネットワーク効果や流動性の集中、セキュリティの仮定を破壊する可能性があります。しかし、モジュール化は、横方向の成長を通じて、イノベーション、カスタマイズ性、拡張性を迅速に進めることを可能にします。

これは、ブロックチェーンのデカップリングとも見なせます。

この変化は、現実的な制約に駆動されている側面もあります。単体チェーンは十分な速度で拡張できないため、モジュール化アーキテクチャは、DA、決済、実行を並行して進化させることを可能にします。

モジュール化への移行を促進する他の要因は？

• Rollupを中心としたEthereumのロードマップ
• ベンチャーキャピタルによるモジュール化インフラへの投資（2023年以降、5億ドル超の資金調達）
• ミドルウェアの標準化（例：IBC、Rollkit）

これらはUnix哲学を想起させます：一つのことを良くやり、それを組み合わせる。Ethereumは決済とセキュリティの中心へと進化しつつあり、Rollupやモジュール化DA層は実行の自由度を模索しています。

モジュール化ブロックチェーンアーキテクチャはWeb3の断片化と見なされることもありますが、これはより深い進化過程の一側面に過ぎません。

以下は、Solanaのモノリシックアーキテクチャの弱点とEthereumのモジュール化の優位性を直接比較したものです。

未来展望

モジュール化運動はまだ初期段階です。

2026年までに、Rollupの合併やエコシステム連合、ツールの標準化の波が訪れると予測されています。

モジュール化スタック間の相互運用性（共通のシーケンサーやHyperlane、クロスチェーンセキュリティのようなブリッジを通じて）が重要なポイントとなるでしょう。

主要な予測

• CelestiaやAvailのようなデータ利用性層が主導権を握り、新たな開発者標準となる可能性。実行層はより専門化・細分化される。
• 多くのRollupがEthereumを基盤とし、中心的な役割を維持。
• 共有シーケンサー（例：Astria）や、意図に基づく実行層などのサービスが登場。

リスク：ユーザー体験の断片化、流動性の孤島化、プロトコルの膨張は、ネットワークの凝集性を脅かす。共有標準がなければ、モジュール化の理論は、互いに接続されていないチェーンの墓場に退化する恐れもあります。

要するに、モジュール化は断片化ではなく、より拡張性と専門性を備えたWeb3の土台を築くものです。

しかし、根本的な問題は、Web3がモジュール化されたブロックチェーンインターネットへと進化し、ユーザーにとっては統一されたものとなりつつ、基盤レベルでは分散性を維持できるかどうかです。